マニュアル社会に飲み込まれるな。自前で生きろ!

世の中と闘い続けるアウトロ−おやじの痛快エッセイ 宮崎学さん


なんともすごい人生経験の持ち主なのである。暴力団組長を父に持ち、子供のころからケンカ三味。早稲田大学時代はマルクス主義に傾倒し、学生運動で大暴れした。その後、週刊誌記者を経て実家の土建業を継ぐが、ゼネコン恐喝がらみで逮捕され(処分保留のまま釈放)、会社の倒産で25億の負債を背負い、グリコ・森永事件の犯人=「キツネ目の男」ではないかと事情聴取され(アリバイがあり、逮捕はされず)、暴力団のピットマンに撃たれて死にかけ……。そんな波澗に満ちた半生をつづった『突破者』が15万部のベストセラーとなって1年半。書店にはすでに5冊の著書が並び、昨年開設したインターネットのホームページには多い日で千件ものアクセスがある。



会社でこんなやなことがあったって話から、取られた土地を取り返すにはどうしたらいいかという相談まで、いろいろ。女性も多いですよ。なんか知らんけどヘンに人気が出ちゃって、最近は、めんどくさくなってきてるんだけど


○損得を判断基準にするな。気持よさを大事にしろ

人気の秘密は、この書出版された『突破者の条件』ーそのとてつもない半生をベースに、日本という社会を見据え、日本人を見つめたエッセイ集を読むと、よくわかる。<市民のマニュアル、良い子のマニュアル、いろんなマニュアルの中で窒息しそうになっている人が多いとしたら、マニュアルとは無縁で生きてきた馬鹿なオツチャンが「ここにおるでえ」ということ、しかも五十数年生きてこられたではないかということが何かの励みになれば>と前書きにあるが、確かに勇気づけられ、刺激されるのだ。思い込んだら損得おかまいなしでガムシャラに突っ走ってきた「突破者」の生き方・考え方に。

たとえば彼は言う。「自前で生きようや」と。

「今の世の中、メリット、デメリットが判断基準になってるけれど、そうやってメリットを追求し、いい大学、いいム会社……とやってきた結果が、岡光(収賄で逮捕された厚生省のエリート事務次官)だよ。やっぱり判断基準は自分の気持ち。メリットがあるからでも、人ほほめてもらうためでもなく、自分が気持ちいいかどうかってことでしよう?僕の好きな作家の池波正太郎さんは、自分の育った下町のことを〈人をうらやましがらない町〉だと表現していた。ところが今の町は、人をうらやましがる人間がほとんどなわけですよね。

 酒鬼薔薇聖斗が住んでいた神戸の新興住宅地に行くと、隣のうちのお父さんは今度課長になったとか、部長になったとか、そういうことばかりやってる。


 ミエや名誉のために、きゅうきゅうとして生きて何が楽しいのか、と僕は思うんですよ。そういうもんを頭の中から取り除いて、違うところに楽しみを見つけるようにしたら、自分の頭の容量をどれだけ有効に使えるか。


 僕の場合は小学校2年ぐらいのとき、学校行くのに友達誘いに行ったら、そこのオバチャンに『明日からもう来ないで』と一言われましてね。おやじなんでかなあと思ったら、親父が談合事件に引っかかって逮捕されて、それが新聞に出てたんですよ。それ以来、ミエや名誉なんて考えすらしない。組織からも自由だし、金からも自由だし、余分なこと言えば異性からも自由(笑い)。

勝手気ままに生きたほうが、人生ラクで楽しい



自前で生きるということは、人のせいにしないということでもある。


「男にしても女にしても、常に自分は〃いい子ちゃん〃でいたいという風潮があって、何かまずいことがあると、被害者面をしたがる。一「私たちは善良な市民で、ちゃんと生きてるのに、どうしてこんなにいじめられなきゃならないの』とかさ。そういう感性は疑ってかかるべきじゃないですか。
被害者である自分ってものの中に安住するということは、言い換えれば自分で考えるってことを放棄しているってるってことだと僕は思います


いい関係を築くコツは最初に波風を立てること


『突破者の条件』と、ほとんど同時に書店に並んだ『突破者烈伝』で、非差別部落出身の突破者を描くにあたり、宮崎さんは事前に関係者のところへ話し合いに出かけた。


 「どんな相手であれ、最初に対立点をキチッと明らかにして、そこでケンカをしておくということが重要だと思うんですね。子供がナイフを持って暴れるのも、波風を立てるのを恐れて親が問題を先送りにしてるから、問題が大きくなってるってこともあるわけでしょう。そういう意味じゃ、一種の極限状況を意識的につくっていったほうがいい。男と女の間でもそうですよ。これから共同生活をしていこうという話モメるとしたら何でモメると思うか”というところから入っていけば、意外と長続きする。


 僕なんか、女とつき合うときは、『ほかにも女が何人おる。子供も認知したのがこんだけ、認知しなくていいのがこんだけおる』と、そういう話、全部しますよ(笑)。こんな時代だからこそ、あけすけな人間関係が必要だと思うし、お、互いに迷惑かけ合う中から、本当の愛情とかいうものが芽生えてくるんじゃないですかね」


 去る4月−日、宮崎さんは「文化人・作家廃業宣言」をした。「本を書いたことで作家や文化人扱いされてしまっているけれど、わけのわからないオッサンと思われていたほうがいい。僕は、書けば金になるから書くんです。もっとも、たとえ100万部売れても、借金の金利の一日分にもならないけど(笑)」


みやざきまなぶ●1945年京都府生まれ。その波澗万丈の人…本文を参照のこと。30億円近い借金あるが「一銭も返してない」。「借金はした次の目から時効だと思ってますから(笑)」。ゆえに住所不定。名刺にはEメールのアドレスのみが書かれている

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